片喰と黄金 7 ヤンマガKC
著:北野詠一
出版社:講談社
セントルイスに辿り着いたアメリア達は、絵描きのイザヤのパトロンであるラルフの家に滞在しながら、西へ向かうための馬車をしつらえる。
その馬車の幌に防水処理を施していた最中、ボヤ騒ぎが起きイザヤが火事で両親を亡くした事を知るラルフは慌てて駆け付けた。
幸い火は倉庫の柱を少し焼いただけで済み、ホッとしたラルフだったがその直後、彼は突然倒れ……。
登場人物
ダッドリー
陸軍少尉
金髪ロングで頬傷の男性。
フォスター
陸軍軍曹
金髪顎鬚の青年。
対人格闘術に優れる。
ベル
陸軍少佐
黒髪オカッパの青年。
一見、冷たく合理主義だが家族と国民を守る事に誇りを抱き、寛容な部分も持ち合わせる。
過去に軍人だった父親がインディアンに殺されたが、復讐は望まず憎しみの連鎖を断ち切る事を目指している。
ワワタシ
ポタワトミ族の少年
彼の兄がベルの父親を殺害した。
平穏な生活を望み白人との融和を目指すワワタシは、ベルの父を殺し村から逃げ出した兄を探しだし、殺そうと捜索の旅に出る。
あらすじ
ラルフが倒れた原因はコレラ。
感染力が強く致死率も高い伝染病だ。
看病を申し出たアメリアだったが、召使い頭はその申し出を拒否。
召使い二人に看護の指示を出した。
その様子をイザヤは一人静かに見守っていた。
その後、ラルフは薬を処方されたがこの時代、まだコレラの治療法は確立されておらず、後はラルフの体力次第になりそうだった。
パトロンであり、唯一の友人でもあるラルフの危機にあってもイザヤはいつもと変わりが無かった。
そんなイザヤにアメリアは絵を選ぶ様に言う。
現在、ラルフが療養している離れの小屋は殺風景らしく、イザヤの絵を持って行けば慰めになる。
友人というよりはイザヤの熱狂的なファンであるラルフなら、イザヤが選んだ絵を持って行けば喜びで全快するかもしれない。
そんな事を話すアメリアの横でイザヤは自分が描いた絵を眺め、その地を訪れた時のことを思い出す。
やがて記憶はラルフに促され旅に出た時の事に移り変わっていく。
両親の死後、ずっと苦しみを抱いて彼は生きていた。
だが旅に出て目にした壮大な自然が彼に生を実感させた。
イザヤは幼い頃から自分おかしい事を自覚していた。
だから生きていくのに苦労しない様に、いい子を演じて過ごしていた。
いつかそれが染みついておかしくない人間に成ると思って。
しかし、火事が起きて両親を見捨て一人逃げた事で気付く。
愛する父母が死んでも自分の心は動かない。
心が生まれて初めて動いたのは広く雄大な世界を目にした時。
逆にいえば、そこまでしないと心に何も生まれない。
自分はおかしい、生まれてきた事が間違いだった。
そんな時、イザヤはアメリアに出会った。
自分が困った時は助けると言った少女。
イザヤは彼女が人を助けないような人間であれば、自分が助からないと証明されたならば。
絶望を持って人生を終わりにする。
イザヤはずっと死に場所と理由を探していた。
感想
今回はイザヤの過去と彼の心のエピソードから始まり、助けに来たアメリア、馬車と旅立ち、西への旅と軍人、馬泥棒、インディアンとコナー等が描かれました。
その中でも今回は父母の死にも、友人の窮地にも心が動かない事で絶望し、自ら死を望んだイザヤが印象に残りました。
彼は人に対して気持ちが揺れない事に悩み、雄大な風景以外に心が動かない事で絶望してしまいました。
イザヤは燃える小屋の中、一人死ぬ事を選び、ラルフはそんな彼の選択を肯定しました。
アメリアはイザヤの邪魔をするなと怒りを見せるラルフに、イザヤを甘やかしすぎですと叫び返し、小屋の窓を割ってイザヤのいる部屋へと向かいました。
現状が苦しくて死を望んでいたイザヤ。
しかし、アメリアが語る未来は彼に生きてみようかと思わせた様でした。
助けてと笑ったイザヤの顔が印象に残りました。
まとめ
今回の後半、西部開拓地域での馬車の旅と先住民族、ポタワトミ族についてが描かれました。
そしてラスト、コナーが出会ったポタワトミ族の少年、ワワタシ。
二人の出会いがどういった物になるのか、次巻も楽しみです。
この作品はコミックDAYSにて一部無料でお読み頂けます。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。