トライガン・マキシマム 3 YKコミックス
作:内藤泰弘
出版社:少年画報社
血界戦線の内藤泰弘さんの描く、SFガンアクションです。
今回はレガートの指示でロストシップを襲撃した、パペットマスターとナインライブズの戦闘から物語はスタートします。
#7 HIS LIFE AS A… あらすじ
レガートはナイブズの命によりGUNG-HO-GUNSへの指示をヴァッシュの抹殺から彼に苦痛を与える事に変更した。
それにより、ヴァッシュのホームとも言うべきメルカバルドル大砂洋に隠されていたシップが襲われる。
襲撃者であるレオノフ・ザ・パペットマスター、グレイ・ザ・ナインライブズを退けたヴァッシュとウルフウッド。
意識を取り戻しメリル達とも再会したヴァッシュは二人をある場所に誘う。
ヴァッシュがメリル達を誘っていた頃、ウルフウッドはシップのリーダーであるルイーダの下を訪れていた。
彼はルイーダにヴァッシュは何か単刀直入に聞いた。
それによるとヴァッシュは70年前に砂洋のほとりで倒れている所を発見され、シップで暮らす人々に助けられたそうだ。
片腕を失いボロボロだったが驚くほどの回復力を見せ彼は意識を取り戻した。
ヴァッシュはシップの中を懐かしそうに見まわし回復するとその足で中層エリアに降りて行った。
息が白くなる低温の空間に無数の円筒が設置されている。
コールドスリープシリンダー、ヴァッシュはメリル達にそう説明した。
「君達の何代も前の、おじいさん、おばあさんと、同い年の人たちだね」
彼は飽きもせずにひとりひとりの顔をずっと眺めていたという話よ。ルイーダはウルフウッドにそう話した。
レムを思い、ポッドを見上げるヴァッシュを見つめながらメリルは思う。
不思議な人…
たくさんの謎と、全ての過去に通じているように見える…
それが彼の生き方とルイーダは語る。
何十年もの間、星に生きる人々のたくさんの「顔」を心にきざみながらあるいてきた。
そしておそらく、この先もずっと…
そう語るルイーダにウルフウッドは尋ねる。
「奴は死なへんのか、絶対の存在を許されとるゆうわけか?」
ルイーダは愚問ねと答えた。
体の傷が彼が不死身でない事を証明していた。
そこに通信が入る。
拘束していたナインライブズの生き残りが脱走したようだ。
慌てるルイーダにウルフウッドは大丈夫だ、狙うとしたら、自分かメリル達だと告げた。
コールドスリープシリンダーに硬質的な音が響く。
音が激しさを増し、飛び出したのは銃を構えたナインライブズだった。
メリル達を狙うナインライブズの二人を着ていたコートでかく乱する。
放たれた銃弾はコートの防弾性により全て止められた。
メリル達を庇いナインライブズの前に飛び出すヴァッシュ。
突き出されたその左腕が銃弾により弾け飛んだ。
腕を失ったヴァッシュにナインライブズが銃口を向けた瞬間、その頭が踏みつけられた。
そこには点滴を抱え不機嫌な顔でヴァッシュに「なめられすぎや」と語るウルフウッドの姿があった。
その通りだと答え争いごとはいまだに怖いと返すヴァッシュ。
そんなヴァッシュにシップの住民が駆け寄ると、彼はシリンダーの番号とそこで眠っている人の名前を告げ、先ほどの戦闘で被弾していないか確認して欲しいと頼む。
それを眺めるウルフウッドに住民と一緒に来ていたルイーダが「呆れたでしょ」と話しかけた。
ヴァッシュはこの船に居る全員の顔と名前を憶えているのだ。
阿呆な話やと答えたウルフウッドに全くねぇと同意しながら彼女は言う。
「長く生きる事、死ににくい事…
いいことばかりじゃないでしょうね」
ルイーダは続ける。
「年月が彼の身内を惑星中に増やすなら、
身内が死に、身内同士が殺し合い、
身内が自分に銃を向けるこの星は……
蜿蜒と続く、地獄そのものだわ」
それでも笑っているヴァッシュを見て、呆れたような笑顔を浮かべウルフウッドは思う。
ぐるぐる、ふらふら
たったひとり、ぎょうさん生かされて…
傷も荷物も増えていく…
…鈍い奴っちゃでホンマ
ええ事ばかりしか覚えてへんのやろ?
なあ、ヴァッシュ・ザ・スタンピード
好きなシーン
・ヴァッシュの表情
今回あらすじを書いた「HIS LIFE AS A…」のラストシーンは、ヴァッシュのとぼけた表情も相まって涙腺を刺激されます。
人の悪意を数多く見てきたであろう彼は、同じ分だけ人の善意や優しさを体験してきたのかもしれません。
感想
人より長い寿命を持ち、星を旅するヴァッシュは、銃を向けられる相手が、友人の子孫であったりする事もあったでしょう。
彼の長い旅路の中では、辛く苦しい思いも数多く存在したはずです。
それでもヴァッシュは笑います。
彼の中には辛い思い出と同時に暖かく優しい記憶も存在しているから…。
一巻の終盤でシップの先生が言うセリフ。
「ヴァッシュ・ザ・スタンピードの身内の概念は、阿保ほど広いんだ」
その言葉の意味が分かるエピソードでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。