あおのたつき 3 ゼノンコミックスBD
著:安達智
出版社:コアミックス
新吉原京町二丁目、羅生門河岸の角、九郎助稲荷のその奥。
浮世と冥土の境となる場所に冥土の花街があるという。
今日もそこに道に迷った亡者が一人。
登場人物
芥子坊主人形
母親を求め社を訪れた。
幼さからか余り言葉を話さず、歩き方もぎこちない。
玉鶴(たまつる)
遊女
こまりという猫を我が子のように可愛がっていた。
こうめ
玉鶴付きの禿(かむろ)
彼女もこまりを可愛がっていた。
平次(へいじ)
遊女屋の若い衆(わかいし)
遊女の指名の取次等、諸々の雑事を行う若い衆の青年。
四方人(よもひと)花魁の新造、八葉(やつは)に恋心を抱いている。
八葉(やつは)
四方花魁の新造
新造はまだ客を取った事の無い遊女。
焦れた客に絡まれた所を平次に救われ好意を抱く。
おかね
平次の働く店の遣手婆(やりてばば)
生霊として社を訪れ、若い衆と遊女の恋について苦言を吐く。
あらすじ
吉睦(よしむつ)の家の下男、鬼助(きすけ)と共に冥土の廓へお使いに出たあお。
吉睦の為に茶菓子を買えとうるさい鬼助から逃げたあおだったが、すぐに捕まり茶菓子をねだられる。
だが金にうるさいあおは全く買うつもりが無かった。
そんなあおに鬼助は死んでまで質素倹約なんてしみったれてる。
使わねぇ金はいっそ三途の川に流せばいいと話す。
それを聞いたあおは、川に流せば現世に届くのかと鬼助の胸倉をつかみ声を荒げた。
だが鬼助の答えはただのたとえ話だった。
あおにはどうしても金を届けたい相手がいた。
百姓の子として生まれたあおが大金を得るには遊女になる他なく、がむしゃらにやる事で衰退する三浦屋を盛り上げるかとまで言われた花魁、濃紫として知られるまでになった。
だが、そんな頑張りも死によって失われてしまった。
「わっちがどれだけ稼ごうが、誰も助けられやしねぇ」
そういってふらりと街を歩くあおにいつかの三つ子が声を掛けた。
再会をはしゃぐ三つ子に往来で迷惑だろうがと鬼助が説教する。
体の大きい鬼助に怯え委縮する三つ子。
そんな三つ子の様子に鬼助は芋を買ってご機嫌を取ろうとするが、三つ子はいらないと遠慮する。
本当は食べたいだろうに我慢している事が透けて見えたあおは、鬼助の分も含め都合四つ、芋を買った。
鬼助が三つ子に芋を配るがあおの分が足りない。
わっちはいらないよ。
そう言ったあおに三つ子の一人が一緒に食おうと半分芋を差し出す。
その姿は幼い頃、食べ物を分け合っていた記憶を呼び起こし、三つ子に背を向け思わずあおは涙をこぼした。
それに気付いた鬼助はあおを追いかけ自分の芋を差し出す。
泣くほど食いたかったのなら、おいらのも食っていいぞ。
鬼助の言葉を聞いたあおは、わっちの買った芋だよ!!と声を上げて笑う。
そんな泣き笑いのあおの顔を眺め鬼助は言う。
誰も助けられなかった。
あおはそう言ったが鬼助は美味そうに芋を食う三つ子を指し示し、助けたんじゃねぇのと笑みを浮かべた。
その後、気恥ずかし気にぷいっと踵を返し、浮世に金を送るだとかも、出来るかもしれねぇしよ!とぶっきらぼうに言い放つ。
それを聞いたあおは「……そうだな!」と瞳に涙を溜めながら笑った。
感想
今回はあおと鬼助、そして以前社を訪れた三つ子との再会から始まり、芥子坊主と玉鶴とこうめ、平次と八葉と遣手婆のおかねの三つのエピソードが収録されました。
今回はその中でも冒頭の鬼助と三つ子の話が印象に残りました。
あおが本当に助けたいのは幼い家族なのでしょうが、それはそれとして三つ子を助けた事であおの心は少し救われたのではないかと読んでいて思いました。
人を助ける事、誰かの役に立つ事がひいては自分の心を救う事になる。
そういう事なんだろうなとあおの泣き笑いの顔を見ていて感じました。
まとめ
あおがお金に執着する理由、それは幼い姉弟?を救うためだったようです。
ただ、あおはそれを為す前に亡くなったようで、その子がどうなったのかは今の所不明のままです。
冥土から現世に金は送れるのか。
あおが遊女に身を落しても救いたかったあの子はどうなったのか。
先が気になります。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。