青野くんに触りたいから死にたい 9 アフタヌーンKC
著:椎名うみ
出版社:講談社
二学期が始まり、学園祭で二年は合同でロミオとジュリエットをやる事になった。
優里(ゆうり)は衣装係とジュリエットの代役。
藤本(ふじもと)は大道具とロミオの代役となった。
そんな時、不安定な青野(あおの)に誘われ優里は延々と続く階段へと迷い込む。
一方、藤本も最初、優里の姿をしていた見知らぬ女に遭遇する。
その見知らぬ女は自殺した青野の母親で、彼女と契約し呼び戻したのは青野の弟、鉄平(てっぺい)では無いかと優里は考え……。
あらすじ
優里は藤本と美桜に、階段で藤本が遭遇したのは自殺した青野の母親で、その母親と契約し呼び戻したのは、青野の弟、鉄平ではと自分の考えを話した。
何故、前に女の事を話した時、言わなかったのか。
そう言った藤本に優里は答える。
青野の母が自殺していた事は、優里が自分の母親から聞いた事だった。
優里の母は一時期、青野の母と同じ薬局で働いていた。
その話をした時、青野は黒青野になった。
青野にとって母親の話はとても心が揺れる事で、この前は整理する時間が欲しかったのだと優里は藤本に伝えた。
青野の両親は既に亡く、彼が祖父母宅で暮らしている事は藤本も知っていた。
しかし、母親が自殺していた事は初耳だった。
「生きてた時より、死んだ後の方が青野がずっと近くなってくる」
それを聞いた優里は生きていても死んでいても、青野はずっと青野だ。
粘土が形を変えても同じ粘土であるように。
同じ粘土でも兎をしたモノと狼の形をしたモノは違う。
藤本は優里の考えは思考停止だと、変化した優里の髪や目の事を持ち出し彼女を責めた。
藤本の言葉に、確かにもっと考えなくちゃいけなかったと言って、優里は逃げ出す様にトイレに立った。
気まずい雰囲気の中、残された美桜に、藤本はよく分からなくなってきたと呟く。
自分が本当に正しい事を言いたかったのか、それとも優里を言い負かしたかっただけなのか。分からなくなってきた。
同じ粘土、その話は藤本も分からない訳ではなかったのだ。
感想
今回は冒頭、青野の母親について、優里たちの話合いから始まり、青野の弟、鉄平との接触、何かを隠してそうな鉄平、美桜による優里の誕生日についてと町についての考察、優里に強く魅かれながらその思いを汚いモノとして自己嫌悪に陥る藤本、優里と姉の翠(みどり)の過去、文化祭開催等が描かれました。
今回はその中でも優里たちが住む町、千羽町についての考察が興味深かったです。
美桜は「幽霊としての青野」と千羽町の歴史と深く結びついた「四つ首様」について、別の怪異と考えつつも、怪異という括りとして共通点あると考えていました。
しかし、この巻では考え方を変えて、幽霊の青野も四つ首様も、この町、千羽町の影響を受けて生まれたモノではと考えを改めました。
以前、小学生の希美(のぞみ)が神隠しの際に出会った死んだ曾祖母の言葉、「刈谷の家にやらせる」「中で大分育っているだろう」等、何となく心霊や呪いに関わっていそうな優里の家の事も含め、町全体が霊的な物に操られている、そんな風に今回のエピソードを読んでいて感じました。
まとめ
今回のラスト、学園祭の演劇で以前、青野の力で傷を負った内田が中心となって申し合わせが始まりました。
彼の始めた儀式がどんな事を巻き起こすのか、次巻も読むのが楽しみです。
この作品はpixivコミックにて一部無料で読む事が可能です。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。