お前、タヌキにならねーか? 2
著:奈川トモ
出版社:一迅社
お人好しな化け狸、こがね丸とその周辺の日常を描いた現代ファンタジー。
登場人物
強盗
全てが嫌になり自棄を起こしてコンビニ強盗を決行した。
原田(はらだ)
世話焼きの小柄なお婆ちゃん。
リン
文福薬湯堂で働くタヌキな少女。
薬湯の調合等も行っている。
薬湯堂の主人であるお婆ちゃんの孫、和一が気になっている。
和一(かずひと)
優し気な面差しの青年。
幼い頃、排水溝に流されそうになっていたリンを助けた。
高校生
眼鏡そばかす男子
居場所が無く孤立していた中学時代から高校入学を機に変わろうと思っていたが、結局変わる事が出来ず人生に絶望していた。
栗之介(くりのすけ)
こがね丸の知り合いのタヌキ。
彼は人に化ける事が出来ないようだ。
カナコ
容姿や性格にコンプレックスを持っており、それを酒に逃げる事で耐えていた。
おでんの屋台で飲んでいた所をこがね丸に声を掛けられ、タヌキに変化させられた。
チョコと大福(だいふく)
保護され動物園で暮らす事になった二匹のタヌキ。
アライグマに対抗心を燃やし、色んな芸をする。
あらすじ
コンビニにニット帽にサングラス、マスクで顔を隠した男が客の老婆に包丁を突き付け金を要求している。
そのコンビニにタヌキの姿で入ってしまったこがね丸。
彼は声を荒げる強盗に「そんなに金がいいか? 唐揚げのがうめーのに」と話しかけた。
それを店員の言葉だと勘違いした強盗は、何が唐揚げだ!! 何日もまともな飯なんか食ってねぇ!! と更にヒートアップした。
それを聞いた人質の老婆はご飯食べてないならイライラして当然だと自分が買った弁当を強盗に差し出す。
強盗は老婆が差し出した弁当をバカにするなとはたき落とした。
床に落ち蓋が開いて唐揚げが転がる。
こがね丸はその転がった唐揚げを素早く口に入れた。
強盗はそれを見て、食うんじゃねぇと落ちた弁当を泣きながら手づかみで食べた。
そんな強盗に老婆は
「やっぱり腹が減ってたんじゃないか、ちゃんと食べてたらこんなバカな事もしないだろうに……」
と語り掛ける。
老婆の言葉に仕方が無いと強盗は返した。
彼は懸命に働き親が残した借金を完済し、今度は自分の店の為に金を集めた。
しかしその金を信じていた者に持ち逃げされてしまった。
真面目に生きていても仕方が無い。一度は自殺を考えた。
だが彼は死ぬ事は出来なかった。
死ぬに死ねず、さりとて生きていく為の金はない。
もうどうしていいのか分からなくなり、男はコンビニに強盗に入ったのだ。
話を聞いた老婆は新しい弁当をスッと男に差し出した。
考えるのは食べてからでいい、腹減らして考え事してもいい事なんて一つもない。
老婆から弁当を受け取り、それを完食した男は、彼女に礼を言って自首すると告げた。
感想
今回は冒頭、強盗と婆ちゃんのエピソードから始まり、薬湯堂のタヌキ、居場所のない少年、変化を覚えたOLの雪、栗之介とカナコ、婚姻届、ラーメン屋とAZ、雪と桜、ホストのハヤトと迷子になった師匠、動物園のタヌキ、雪と薬湯堂、タヌキの神様等が収録されました。
今回はその中でも栗之介とカナコの話が印象に残りました。
カナコは太っている自分の容姿にコンプレックスを持ち、その事で自分を卑下する周囲に心の中で毒を吐くという悪循環に陥っていました。
そんなカナコを栗之介は山に誘います。
その山登りの途中、栗之介はカナコの足場選びや山登りを頑張った事を褒めました。
カナコは目的地である山の原っぱで寝ころびながら、これまでの自分を振り返ります。
馬鹿にされた事で傷付き、馬鹿にして来た者達を見下す事でその傷を覆ってきた自分。
ですがカナコはそんな見下す自分の事も嫌っていました。
作中、栗之介が語る様にカナコの周囲には、優しさが無かったんだろうと思います。
悪意は巡り巡って自分に返り、優しさも巡り巡って自分に返る。
エピソードを読んでいてそんな事を思いました。
まとめ
今回、少しだけこがね丸の過去が描かれました。
彼が何者なのか、雪との関係はどうなるのか。
次巻も楽しみです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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