ヴィンランド・サガ18 アフタヌーンKC
作:幸村誠
出版社:講談社
かつてトルフィンが殺した男の娘、ヒルド。
復讐に燃える彼女は、食事に毒を入れたとトルフィン達に告げ、トルフィンとの一対一の対決を望んだ。
彼女に謝罪し、対話を試みるトルフィンだったが、彼女の怒りは収まらず姿を捉える事さえ難しい。
エイナルが森に踏み込んだことで、トルフィンは覚悟を決め、自身の身を囮にすることで、ヒルドの位置を特定する。
弩の特性上、再装填には時間がかかるはず、そのトルフィンの考えを彼女が考え作り出した弩は凌駕した。
足を打ち抜かれ動きを封じられたトルフィンは、彼女の前に膝を折る。
駆け付けたエイナル達の説得も、ヒルドの復讐心を押さえることが出来ない。
トルフィンは、彼女に殺されに戻ることを誓い、国を作るための数年間の猶予を請うた。
しかしヒルドはそれを受け入れず、引き金は引かれてしまう。
だが矢は空にむかって放たれていた。
彼女の父と師匠は、ヒルドが恨みと怒りに囚われて人を殺めることを止めた。
ヒルドはトルフィンの命を奪う事を保留し、彼を監視することを告げた。
第123話 借り物の命
あらすじ
弩から矢が放たれトルフィンの眉間が打ち抜かれる。
その間も彼は願い続ける、どうか数年の時間をと……。
エイナルに揺り起こされトルフィンは目覚めた。
エイナルが言うにはヒルドとの戦いから丸一日たったようだ。
ここはノルウェーのベルゲン。レイフの知り合いの家らしい。
トルフィンは不意に解毒薬の事を思い出し、ベッドから起き上がろうとした。
しかしエイナルに傷口が開くと止められる。
彼は落ち着いた口調で、毒は盛られていなかった事をトルフィンに説明した。
全てはヒルドのハッタリで、解毒剤だと彼女が見せた瓶には、ただの塩が入っていたそうだ。
安心し枕に頭をゆだねるトルフィン。
横になったトルフィンにエイナルは体の心配をしろと話す。
トルフィンは全部で五発、弩の矢をもらっていた。
左足の骨は砕け、しばらくは絶対安静で春までは養生しろと告げられた。
貴重な時間を失ったことを謝罪するトルフィンに、エイナルは謝るのはそこじゃないと話す。
彼はトルフィンが、ヒルドにとどめを刺されそうになった時、諦めたことに対して怒っていた。
ずるいぞと言ったエイナルに、トルフィンも言い返す。
彼は都合三回、彼を庇って死のうとした。
死のうとはしていない、助けようとしただけだと反論するエイナルに、同じだ、お前の助け方はと声を上げ、ため息を吐く。
トルフィンはエイナルに謝罪し、命を諦めることはしないと約束した。
そして、この命は借り物で、ヒルドに返すまで大切に使わなくてはと続けた。
エイナルは、アルネイズの墓の前で誓ったことを忘れるなと口にする。
ヴィンランドに平和の国を作るまで、お前は死ねないんだ。
そう語るエイナルにトルフィンはお前もなと返した。
ヴィンランドに辿り着くまでは……。
所変わって、イングランド、イーストアングリア伯領。
夫婦が喧嘩をしている。
旦那が真面目に働かないのを妻が責めている。
声を荒げる妻に、旦那は声量を下げるよう宥めている。
ケンカしているとアレが来る。
旦那がそう呟いた直後、家の壁が吹き飛んだ。
そこには眼帯の大男が、両手に戦斧を携え立っていた。
戦争(ケンカ)と男は尋ねる。
怯える旦那に男は続けて言う。
「してたろ今、戦争(ケンカ)。
まぜろ。
オレもまぜろ戦争(ケンカ)。」
二人は喧嘩していないことを大声でアピールする。
男は呆けたような顔になり、戦争(ケンカ)をやっている場所を夫婦に尋ねた。
知りません!!と返答すると、駆け付けた男の部下が彼を回収し、旦那に壁の修繕費を渡して去って行った。
大男の名はトルケル。
イースト・アングリア伯に任じられ、一年以上戦争をしていない彼は、戦争に飢えていた。
そこに伝令が訪れる。
戦争かと期待した彼にもたらされた報は、クヌートからの軍の解散と、デンマークへの帰国を命じるものだった。
更にトルケルには、イングランドに従士と共に残り、所領安堵に尽力せよと命が下された。
トルケルは放心し、その場に崩れ落ちた。
これ以上の平和は、彼の命に関わることになりそうだ。
感想
傷も癒え、ベルゲンを発ったトルフィン達でしたが、ヨーム戦士団の次期首領の座をめぐっての争いに巻き込まれます。
戦争に飢えていたトルケルも参入し、平和な旅を望むトルフィンの願い空しく、否応なしに戦いの渦に飲み込まれていきます。
今回は少し成長したカルリの可愛さが際立っています。
他には新たに旅に加わった、ヒルドのスナイパーっぷりが凄まじいです。
こちらの作品はコミックDAYSにて一部無料でお読み頂けます。
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