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ヴィンランド・サガ 第十七巻 第百十九話 あらすじ・感想

投稿日:2019年2月12日 更新日:

冬の森ヴィンランド・サガ17 アフタヌーンKC
作:幸村誠
出版社:講談社

トルフィン達はグズリーズ、諍いにより家族を無くしたカルリ、彼と母親を守っていた犬を旅の仲間に加え、グズリーズを取り戻そうと追跡をつづけるシグルドから逃れ、ノルウェーのベルゲン近郊に辿り着いた。

一行が食事の支度をしていると、そこで冬ごもりに失敗した熊に襲われてしまう。
応戦するトルフィンだったが、熊相手にナイフでは致命傷を与えることが出来ず、窮地に陥ってしまう。

エイナルはトルフィンを救おうと、鍋を叩き熊の注意を引きつける。
その時、掲げた鍋の隙間を縫うように、熊の心臓に矢が突き刺さる。
飛来した矢の威力はすさまじく、丈夫な熊の胸骨を貫き熊を絶命させた。

矢を放ったのはヒルドと名乗る女狩人だった。
彼女は手際よく熊を解体し、獲れた熊肉で一行は鍋を囲んだ。
グズリーズの言葉に促されるように、ヒルドは自らの過去を語る。
彼女の父親はかつてトルフィンが殺した人物だった。

ヒルドはトルフィンを殺そうと弩を構えるが、エイナルに邪魔される。
彼女は、鍋に毒を仕込んだと口にし、解毒剤が欲しければ私から奪えと、トルフィンに一対一の勝負を申し込み、森に姿をひそめた。
トルフィンは解毒剤を入手するため、女狩人の待つ森に足を踏み入れた。

ヒルドはかつて凪の入り江と呼ばれる集落で暮らしていた。
彼女の父、フラヴンケルがこの地を治めている。
ヒルドはこの地で様々な発明をし、父も彼女の才能を認め、家族四人幸せに暮らしていた。

しかしその幸せも突如として奪われる。
凪の入り江をアシェラッドという男を頭目に頂いた集団に襲われたのだ。
家が襲撃を受け、母は殺された。
フラヴンケルは娘たちを逃がすため戦い、ヒルドは妹とはぐれ森の中をさまよっていた。

父と再会できたヒルドは、妹フレヴナとはぐれたことを父に話す。
そんなヒルドをフラヴンケルは抱きしめ、この先、恨みと怒りに押し潰されそうになった時、イエス様の言葉を思い出すようにと話した。

「人を赦しなさい。赦す心だけがお前を救ってくれる」

難しいことだが、賢いお前ならきっとできるとフラヴンケルはヒルドを強く抱きしめた。

そんな二人のまえに一人の少年が現れる。
アシェラッドの下で戦いを続けていたトルフィンだった。

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第119話 狩る者 狩られる者6

あらすじ
トルフィンと対峙するフラヴンケル。
彼はトルフィンに誰が命令を下したのか尋ねるが、トルフィンは取り付く島もない。
ヒルドを一人にしないと振るわれた、フラヴンケルのハンマーをかいくぐり、トルフィンのナイフは彼の首に突き立った。

父が倒れるのをヒルドは茫然と見ていた。
トルフィンはヒルドを見逃そうとするが、ヒルドは立ち去ることはせず、なぜ父を殺したのか彼に尋ねた。

トルフィンは苛立ちながら答える。
彼は言った、これは狩りだと弱い奴が強い奴に狩られる。
お前らは俺より弱い、だから狩られた。
恨むなら自分の弱さを恨め。

「オレが狩る側でお前らが狩られる側だ
ただそれだけのことだ」

彼の言葉はヒルドの胸に深く突き刺さった。
アシェラッドの手下が近づくのに気付いたトルフィンは、ヒルドの頬を平手で殴り、消えるように促した。

彼女は森の中を走った。
走りながら、みんなが狩られたのも、自分が狩られようとしているのも、あいつらが強くて、私達が弱いから、弱いから

泣きながら森を逃げていたヒルドは、足をすべらせ崖から転落する。
途中、岩に頭をぶつけ、そのまま沢に落ちた。

落ちた沢からは星が見えた。
ヒルドの心には、弱いから、狩られるという事が刻みこまれた。
父は人を赦せと言った。
誰を、父を?私を?それともあの人殺し達を?

暗く沈む意識の中、ヒルドは己に問いかける。
無理だ、赦せない。あいつらを赦すなら、あいつらに狩られる事をうけいれなくちゃいけない。
脳裏に父を殺した男の顔が浮かぶ。

赦せない あいつらを
赦せない 狩られるだけの自分を
赦せない

目覚めたヒルドがいたのは、粗末な小屋の中だった。
木を組み、葉で屋根が葺かれている。
小屋の中には、肉や魚、野菜が吊り下げられていた。
小屋を這い出ると、周りには鍋が置かれたかまどや洗い物が干してあった。

痛みを感じ、足を見ると布が巻かれ木で固定してある。
茂みが音を立てて揺れ、ヒルドは逃げようと地面を這った。
出てきたのは、毛皮のチョッキを着た老人だった。

彼はヒルドに食事を与え、身の上を聞いた。
彼は早く食えとヒルドに言う。
器が一つしかないため、彼女が食べ終わらないと、自分が食べれないと言った。
熊の肉らしい、力がつくと老人は話した。

ヒルドは木につるされ干されている熊の毛皮を見て、老人に尋ねる。
熊を彼が獲ったのかと、老人は肯定し、独りでと重ねて尋ねるヒルドにそうじゃと答えた。
ヒルドは彼の使っている弓を見た。

明日になったら里者を呼びにという老人の言葉をさえぎって、ヒルドは狩りを教えて下さいと口にした。

静かに見返す老人に、他に行くところもない、雑用でもなんでもするから、狩りを教えて下さいと再度頼んだ。

感想

今回は丸々一冊ヒルドのお話です。
彼女は時代的に考えて有り得ない閃きを持った、天才的な発明家です。
水車を使った回転のこぎりや、軸が熱を持つのを防ぐためのベアリングまで単独で思いついています。

そんな彼女が、女性の筋力でも引けるよう考案したのが、梃子の原理を利用した彼女オリジナルの弩でした。

初めて読んだ時は震えました。
女性という筋力的なハンデを、己の技術力で解決し、さらにその上を行く。
ヒルドの心に宿った父と師匠は、彼女にトルフィンを殺すことをさせませんでした。
彼女が、トルフィンの監視のためとはいえ旅に加わったことは、トルフィンの国造りにとって大きな力になるでしょう。

ヴィンランドサガ・サガ 第十八巻 あらすじ・感想

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