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ヴィンランド・サガ 第十三巻 第九十三話 あらすじ・感想

投稿日:2019年2月8日 更新日:

草木
ヴィンランド・サガ13 アフタヌーンKC

作:幸村誠
出版社:講談社

イェリングから農場にたどり着いたトールギルは、王の軍隊と戦うため奉公人たちをかき集める。
王に農場を奪われる事に絶望したスヴェンは、癒しを求めアルネイズを求めるが、妻から彼女がガルザルと逃亡しようとしたと聞かされ、激しく怒る。

一方、レイフはスヴェンとの約束を盾に、蛇に拘束されたトルフィンとの面会を求めるが、ガルザルの逃亡に手を貸した件で蛇は受け付けない。

レイフがスヴェンと話をつけるため、彼の元を訪れるとスヴェンは怒りに任せ、アルネイズを打ち据えていた。
蛇が止めたことで、アルネイズは一命をとりとめるが、意識不明の重傷を負ってしまう。

農場を王に奪われる事と、アルネイズの逃亡はスヴェンの心に怒りを植え付ける。
彼はトールギルによって招集された農民に檄を飛ばす。
スヴェンの言葉によって、奮い立つ群衆。

そんな中で、蛇は冷静に状況を見極めていた。
王が連れてきたのは、従士団とヨーム戦士団、歴戦の戦士百名相手に、寄せ集めの農民三百五十で勝てるわけがない。
蛇はキツネたちに逃げるように言い、自らは戦列に加わるべく砦をあとにする。
そんな蛇にキツネたちも続いた。

戦闘のどさくさに紛れて、アルネイズを連れ脱出を図るトルフィンたちだったが、彼女の怪我は重く、希望を亡くした心は死が見せる安息を求めていた。
トルフィンとエイナルに別れを告げるため、アルネイズは目をあけた。

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第93話 戦士の誕生

あらすじ
戦闘は農場側に大きな被害を出したが、トールギルがクヌートを奇襲したことで、軍は引き、蛇は負傷したスヴェンを抱え退却した。

一方、アルネイズを連れ、農場からの脱出を試みるトルフィンたちだったが、彼女は今まさに死にゆこうとしていた。
エイナルはお腹の子供のために生きろと説得するが、彼女は腹の子がすでに生きていないと悟っていた。

大切な人は全て死に絶え、彼女は苦しみばかりの世で、生きていく意味を無くしてしまった。
トルフィンはそんな彼女にかける言葉を見つけられなかった。
呼吸を止めたアルネイズに、トルフィンはトールズから教わった蘇生を施す。

エイナルも、あなたが好きだ!大切な人だ!一緒に生きてくれ!生きていてくれよ!!と秘めていた気持ちを言葉にして呼びかける。

アルネイズは死んだ。

トルフィンは彼女の最後の言葉を思う。

なぜ……生きなければならないの? 苦しいばかりなのに……

トルフィンは静かに語り始める。

「……はるかな西……大海の向こうにヴィンランドという名の…土地がある。

そこは暖かく豊かで、奴隷商人も戦の炎も届かな遠い地だ。
そこならきっと、あなたも苦しまずに生きていける。

アルネイズさん、オレ達と一緒にそこへ行こう。
ヴィンランドに平和な国を作ろう。」

誰もなにも言わなかった。

彼らの元に、蛇がスヴェンを背負って現れる。
スヴェンを見たエイナルは、怒りを爆発させる。

「殺す!!殺してやる!!」

トルフィンはエイナルを止めようとするが、怒りに我を忘れる彼を抑えることが出来ない。
トルフィンは彼を止めるため、顎を殴り動きを止めた。

トルフィンはうずくまるエイナルの横に跪き、彼と共に泣きながら言う。

「お前の怒りは旦那を殺したっておさまりはしねェ。
怒りが怒りを呼んで、次々に人が死ぬだけだ。
そうやって、この世が地獄になっていく、オレはそれをずっと見てきた。
頼む……兄弟……
オレと同じ呪いになんかかからないでくれ……。」

海が見える丘の上、アルネイズの墓の前に、トルフィンとエイナルはいた。
レイフと蛇たちは二人を残し、墓を後にする。

涙を拭き、エイナルはトルフィンに尋ねる。
さっきの話は本当かと。
トルフィンはヴィンランドだと答えた。

トルフィンはアルネイズの、なぜ生きなければという問いに咄嗟に答えられなかった。
彼女は死よりも魅力的なものを全て失った、生きなければならない責任も全て失くした。
彼女にとって死は恐怖ではなく、最後の救い、完全な安らぎだった。
そんなアルネイズに「だから生きろ」と言えるだけの言葉がすぐには出てこなかった。

死を超えるものが欲しい、アルネイズに胸を張って語ることが出来る。
死を超えた救いと安らぎが生者の世界に欲しい。
無いなら作る。トルフィンはそう話した。

トルフィンは立てとエイナルに手を差し出す。
エイナルはその手を取り立ち上がる。
トルフィンとエイナルは、アルネイズの墓の前で固く手を握り合いながら、ヴィンランドに平和の国を作ることを誓った。

奴隷も戦争もない国を、アルネイズのために

感想

アルネイズの死により、トルフィンは明確に自分が成すべきことを見定めます。
怒りと憎しみの連鎖を断ち切り、暖かく豊かで平和な国を作るため、彼の戦いが始まります。

今回は、トルフィンとエイナルは、もちろん素晴らしいのですが、蛇が地味にいい味を出しています。

ヴィンランドサガ・サガ 第十四巻 あらすじ・感想

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