ヴィンランド・サガ11 アフタヌーンKC
作:幸村誠
出版社:講談社
ケティルの農場で奴隷として働きながら、生まれ変わり本当の戦士として生きる道を模索し始めたトルフィン。
一方クヌートは、イングランドとデンマーク、二国を手中に収め北海の帝王たらんと、兄王ハロルドの毒殺を目論む。
そんな彼には、幻覚として現れる父スヴェンの生首しか本音で語り合える相手がいないのだった。
第73話 自由になったら
あらすじ
トルフィンとエイナルが出会って三年以上が過ぎていた。
最後の一本を切り倒し、開墾のための伐採作業は終わった。
飛び上がり、喜びの声を上げる二人。
三年の月日は、トルフィンを腹の底から笑えるように変えていた。
森一つを畑に変え、次の夏の収穫分で彼らは自由の身になれる。
エイナルに、自由になったらどうすると尋ねるトルフィン。
彼はアルネイズの事が気にかかっているようだ。
しかし旦那はお気に入りの彼女を、手放すことはないだろう。
お前はアイスランドに帰るのかとエイナルに問われ。
たぶん一度はと答えた後、やってみたいことはあると続けた。
「世の中から…戦争と奴隷をなくすことは、できないもんかな…」
トルフィンの真剣な横顔をみて、エイナルは夢のようだなと呟いた。
二人の元を訪れたケティルが、伐採された土地をみてよくやったと声をかけて来る。
種まきまでに整地できそうか尋ねるケティルに、エイナルが急げばと返す。
その答えに笑みを浮かべ、ケティルは種まきが済み次第、二人は自由だと告げた。
反応の薄い二人に、余り嬉しそうじゃないなと疑問を浮かべるケティル。
その言葉に、わざとらしく喜ぶトルフィンとエイナルだったが、ケティルは、スマンが手続きは旅から帰ってくるまで待ってくれと話す。
お出かけですかと問うエイナルに、ウムと答え、彼らにスヴェルケルの居場所を尋ねた。
来ていないと答えると、ケティルは二人にハラルド王の見舞いに、イェリングの王宮に行くことを、スヴェルケルに伝えてくれと言い残し、種まきまでには戻るとオルマルを連れて去っていった。
去り際、自由になったら、このまま奉公しないか考えておいてくれと言うと、今度こそ畑を後にした。
夕方、スヴェルケルの家に向かいながら、ケティルの提案について話す。
エイナルは、やはりアルネイズの事が気になるようで、奉公すれば彼女を解放するチャンスがあるかもしれないと口にする。
そこまで惚れていたのかと驚くトルフィンに、自由にしてあげたいだけだとエイナルは照れながら言った。
二人がドアの前に立つと、扉が勢いよく開けられ、蛇が怒声を放つ。
「遅っせーぞジジィーッ!!殺す気かーッ!!」
余りの剣幕にたじろぐ二人に、スヴェルケルは一緒では無いのか尋ねる。
逆に、戻っていないのか蛇に聞くと、朝に畑に出たまま戻っていないらしい。
昼も食ってねェんだぞ!と、苛立ちをあらわにする蛇の顔が徐々に緊迫感を帯びる。
突然駆け出した蛇は、どちらへと問うエイナルに、畑だついて来い!と言い放ち、馬に飛び乗る。
畑に駆け付けた蛇たちが見たのは、鍬を持ったままうつぶせに倒れたスヴェルケルの姿だった。
感想
この巻では、主を殺害した逃亡奴隷や、ケティルの農場を手に入れようとするクヌートの陰謀など、平和に暮らすトルフィンに忍び寄る戦いの予感が描かれます。
ちなみにスヴェルケルは、倒れはしたものの元気です。
トルフィンを探すレイフが、ケティルと出会ったりと物語が動き出す予兆を感じる11巻でした。
こちらの作品はコミックDAYSにて一部無料でお読み頂けます。
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