しらずの遭難星 上 ヤングジャンプコミックス・ウルトラ
著:瀬野反人
出版社:集英社
宇宙のあらゆる場所、現象がナノマシンによって調査データベース化された未来。
胞子人の青年ジアは全てが解明されている世界に嫌気がさし、未知を求めブラックホールに飛び込んだ。
そして辿り着いた星は誰も知らない惑星で……。
登場人物
ジア
胞子人の青年
環境適応能力は高いが活動能力は低い。
胞子人という名が示す様に、体が菌糸によって形作られている。
長時間活動すると体が解け粘菌の様になる。
胞子人は個体数が少なく保護対象。
ラミュ
ニューコ人の女性、警官
ブラックホールに探索に赴こうとしていたジアを引き止めようとしていた。
ニューコ人は優れた筋肉組織を持ち、非常に力が強い。
その反面、非常に燃費が悪く多くの食料を必要とする。
エッダ
ジアが辿り着いた星の住民
ロングヘアーの女性。
星の住民は自身の有用性を他者から認められないと旅人として集落から追い出される。その為、自分の価値を非常に気に留めている。
あらすじ
胞子人の青年ジアが辿り着いた惑星。
そこはブラックホールに近く、あと一年で消滅する星だった。
彼が危険を冒してまでそんな星に来た理由。
それは彼が胞子人である事が原因だった。
胞子人は他の種族に比べ非常に活動能力に乏しい。
他の種族が一時間で出来る事をジアは八時間かけなければ行えない。
また、個体数が少なく保護の対象になっていた。
結果として、仕事を任される事無く、他種族の手によって援助され生きてさえいればいいという状態だったのだ。
ジアはそれを良しとしなかった。
確かに仕事の手は遅く、彼に任せるぐらいなら他の者にやらせた方が効率は良いだろう。
だが、その遅い仕事が彼のペースなのだ。
そんな訳でジアは自分のペースで働きながら、生きる事の出来る場所を求めていた。
しかし、この世界はナノマシンにより調査がされ尽くしており、何処にも彼を放って置いてくれる場所は無い。
だから彼は未知を求めブラックホールに飛び込んだのだった。
感想
何もやらせてもらえない胞子人のジア。
彼と共に未知の惑星に不時着したニューコ人のラミュ。
ジアはラミュを星から追い出す為、故障した宇宙船の修理をラミュと協力して始めるのですが……。
この作品を読んで印象に残ったのは有用性についてでした。
作中登場する種族、胞子人やニューコ人ですが、彼らは元は同じ種族を改良し生み出された者の様です。
胞子人は過酷な環境に耐える肉体を求め、ニューコ人は入植後の惑星開発の為、遺伝子操作、改造によって生み出された様でした。
そう言った種族の違いによる有用性。
能力、有用か否か。
現代でも少なからずそんな考え方はある様に思います。
無駄を削り効率化を進める。聞こえはいいですが無駄とは余裕であり、選択肢の幅である様に思います。
余裕を失くした社会、それは許容量を超えれば簡単に崩壊する社会であるように思います。
作品を読んでいてそんな事を思いました。
まとめ
この作品はナンバリングは無く上巻という扱いです。
中巻があるかは分かりませんが、二巻、ないし三巻構成という形になるのでしょうか。
ともかくとして、先が気になる作品です。
この作品はとなりのヤングジャンプにて一部無料でお読みいただけます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。