おわりもん コミカライズ版 1 バーズコミックス
原作:高須光聖
作画:忠見周
出版社:幻冬舎コミックス
時は戦国、場所は畿内の何処か。
峠の山道に罪人が六人、首を出して埋められていました。
その罪人たちの横には椀に入ったサイコロが一つにノコギリが一つ。
立札には通行人に向けて、出た目の罪人の首をノコで挽くように書かれていました。
その埋められた罪人のうちの二人、五郎左衛門(ごろうざえもん)と又兵衛(またべえ)が何をしたのか。
作品は彼らが戦に参加する為の資金稼ぎをしている所へと遡ります。
登場人物
又兵衛(またべえ)
罪人、農民
顔立ちの整った肝の据わった男。
おわりもんと呼ばれる親も仕事も無いあぶれ者。
領主である三好の呼び声を受けて、一攫千金を求め戦へと向かった。
寡黙で知恵者。
五郎左衛門(ごろうざえもん)
罪人、農民
かえる顔の太った男。
又兵衛と同じ村の住人、彼もおわりもん。
声が大きく良く喋るお調子者。
藤田重盛(ふじた しげもり)
三好の侍大将
離れ目で髯のおじさん。
尊大で傲慢。
又兵衛達を誰何し斬ろうとして、逆に囚われる。
猿(さる)
藤田に仕える多分忍び
藤田を捕まえていた又兵衛達を一瞬で叩きのめした。
トンボ
鬼虎一党と名乗る賊のひとり
破れた着物とボロボロの鎧を着た女。
身軽で女性でありながら一党の男達からも一目置かれている。
蛇蔵(へびぞう)
鬼虎一党のひとり
額に罪人の入墨を入れられた危険な目つきの男。
罪人として味わった恨みを三好の侍である藤田に返そうとする。
あらすじ
隣国多幸(たこう)の領主が領境を超え侵攻。
それを迎え撃つ為、三好は領民に招集を掛ける。
村の厄介者であった又兵衛と五郎左衛門は、一旗上げようと戦に参加する事を決める。
しかしその為の武具を設える金さえ無い。
そこで又兵衛達は崩れた橋の下流で残骸を渡ろうとした者を助け、礼金をせしめようと画策する。
彼らの思惑通り、一人の旅の僧が残骸の上を渡り始めた。
そして思った通り、バランスを崩し落ちはしなかったものの、被っていた傘が川に流れた。
五郎左衛門は仕方の無い坊さんだと傘を拾ってやり、こちら側に戻って来た僧に傘を手渡そうとした。
その時、傘の緒が切れかけているのを見た五郎左衛門は、直してやろうと緒を注視する。
その緒の中に何かが入れられている事に五郎左衛門が気付いた瞬間、僧が五郎左衛門を殴りつけた。
訳も分からず殴られた五郎左衛門に僧は更に攻撃を加え、最後には組み敷いた彼に短刀を振りかぶった。
五郎左衛門を助けようと手近な大石を持ち上げ攻撃した又兵衛だったが、肩に石を打ち付けても僧は怯む事無く、逆に振られた短刀で又兵衛の胸は浅く切り裂かれた。
思わず五郎左衛門を見捨て逃げ出した又兵衛だったが、それは彼の策だった。
僧侶は傘に強い執着を見せていた。
又兵衛はその河原に落ちていた傘を持ち逃げた。
案の定、僧は傘を追い又兵衛に印地打ち(布を用いた投石)で攻撃を仕掛け、更に錫杖に偽装した槍を抜き彼を追う。
印地打ちによって手傷を負いながら又兵衛が逃げた先は先程、僧が渡ろうとしていた橋の残骸。
又兵衛は残骸を渡りその途中の残骸に生えていたキノコに注目した。
そのキノコは在所では“しろたけ”と呼ばれる物。
そのキノコの生えた残骸を飛び越えた又兵衛は、着地した足場が壊れ水没、残った残骸にしがみ付く事になった。
そんな彼に僧は槍の穂先を向ける。
その僧が立っていた場所は先程、又兵衛が飛び越えたシロタケの生えた残骸だった。
しろたけ、またの名をくされたけ。
そのキノコが生えた木材は見た目は丈夫そうに見えても、ひどく脆くなるという代物だった。
その事を又兵衛が僧に伝えた直後、彼の乗った残骸はバラバラに砕け僧は川の流れの中に消えた。
一命を取り留めた又兵衛達が傘の緒の中を調べると、そこには油紙に包まれた一枚の手紙が入っていた。
手紙はいわゆる密書と呼ばれる物だった。
感想
ノコヒキの刑に処された又兵衛と五郎左衛門。
彼らが何故刑罰を受ける事になったか、その経緯を描いていく形で作品は語られます。
頭が切れ目端の利く又兵衛とお人好しでお調子者の五郎左衛門。
又兵衛も五郎左衛門も農民の出ですので、武芸といった物は身に着けておらず、基本、侍(藤田は除く)や賊には太刀打ち出来ません。
そこを又兵衛の知恵やブラフ混じりの会話と、五郎左衛門の運任せの発言で命を繋いでいく、そんな綱渡りな感じがとても楽しいです。
まとめ
作中語られた事によれば、二人は武家の大将から大金を奪ったようなのですが……。
二人がどうやって金を奪ったのか、何故捕まってしまったのか、そして埋められた二人は助かるのか、非常に先が気になります。
この作品は電子書籍ストア ブックライブにて無料で試し読みが可能です。
原作者の高須光聖さんのTwitterはこちら。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。