トクサツガガガ15
作:丹波庭
出版社:小学館/ビッグコミック
中村叶、27歳、OL、特撮オタク。
母に怒りに任せ絶縁状を叩きつけてしまった叶。
以前の様な関係に戻りたい訳ではないが、このままというのも落ち着かない。
叶は獣将王の終わりに合わせ、帰省することを決め、それを北代さんに話した。
北代さんは吉田さんにも伝えておくと言い、三人で食事しながら話すことになった。
話を聞いた二人は、ミヤビさんも誘って一緒に行きましょうと言い出す。
二人の友情に感謝する叶だったが、よくよく聞いてみれば、二人は旅行を楽しむ気満々だった。
私はダシにされただけかいと呆れる叶。
持ちつ持たれつですよという吉田さんの言葉に、ええように言うなと突っ込みながら、叶は仲間のありがたさを感じていた。
第142話 魂(エゴ)の行方
あらすじ
会社の昼休み、同僚と一緒にお弁当を食べていた叶。
そこで同僚の藤井さんが見た映画の話になり、スマホで写真を見せてもらう。
主役の俳優に見覚えがあった叶は、それが白狐丸を演じた人物だと気付く。
藤井さんのお墨付きなら、私も観てみようかなと言う叶に、藤井さんの表情が強張る。
話を聞くとR指定が入っており、指詰めや濡れ場などきわどいシーンも入っていて、人に勧めにくいようだ。
叶はそういうのは平気だし、エログロもそれ自体は悪じゃないと擁護するが、藤井さんの良い話なのにエログロの所為で、人を選ぶ事になるのはもったいないとの言葉に
確かに!!
とショックを受ける。
叶は、傑作だけど、エログロの所為で私が変態と思われそうと話す藤井さんの言葉で、自分も白狐丸は好きだけど、下品すぎて人に勧めづらいと思い当たる。
実際、白狐丸も1,2話で、受け付けない視聴者がだいぶ脱落してしまったようだ。
R指定も15~18歳の客を切り捨てることになり、多くの映画はRがつかない様苦心している。
叶も下品ささえなければ、もっと良かったのではと思う事もある。
家に帰った叶が携帯を見ると兄から連絡が入っていた。
バンドのTシャツ(うんこor眼がいっぱいの二択)のデザインが添えられていて、どちらが良いか叶の意見も聞きたいらしい。
叶は帰省することを兄にも伝えようと思い、電話をかけた。
Tシャツについて尋ねる兄に、そのことで電話したんじゃないと言って、連休を利用し帰省することを伝える。
兄に母の様子を尋ねるが、特に変わりは無い模様。
兄は、二人の関係がこじれる事を危惧し、首を突っ込むのを控えたようだ。
でも一つだけ聞いてええかと兄は言葉を続けた。
何と返す叶に、彼はTシャツはどっちがいいと尋ねた。
心の底からどっちでもいい…
そんなこと言わんでと食い下がる兄に、金かけるんやったら、もっとちゃんとデザインせェ!!と声を荒げる叶。
前のはよく売れた。寝巻にするて!!と反論する兄に、叶は外に着ていけるデザインにせェよ!!返す叶。
叶は兄の下品なバンドを好きな人間が、変態Tシャツを好むのもわかるが、ただでさえバンド活動は厳しいのに、間口が狭いTシャツを作るメリットはあるのかと兄に尋ねた。
兄はちゃんとメリットはあるという。
俺たちはこんなにも楽しい…
叶は自己満足やないかと呆気にとられる。
そうだがと居直る兄に、客には関係ないやんと叶はツッコむ。
それに対して兄は、バンドやってんのは俺らやで。
俺らがしたい事したら悪いんか?と答えた。
だって…お金はらっているのは客だしと、しどろもどろに返す叶。
作品は、観る人だけのためになればいいのか。
叶は白狐丸と猫又ェ門とのやり取りを思い出す。
自分のために力を使う白狐丸に猫又ェ門は、力は世直しのモノ、正義のモノだと憤る。
それに対して白狐丸は、公共のモノってことねと話し、ほんならと続ける。
「も一つついでに。『オレのモノ』でもあるワケよね♡」
と妖をぶった切る。
オレのもらった力を、オレのために使って、なぁにが悪い。
紫煙をくゆらせながら慈善事業じゃねぇんだ。と開き直る白狐丸。
世間一般に受け入れられる物に、迎合することは、正しいのかもしれない。
白狐丸のように下品な路線や、デジタル技術で代用可能な物を、わざわざミニチュアで作るのはエゴかもしれない。
だが、それが無くなれば、彼らには骨しか残らないのではないか。
それに一般向けに振舞ってみたところで、本職には一ミリも勝てない。
下品なだけでなく、キレッキレッのセンスとトガリ方が白狐丸の魅力なのだ。
Tシャツの話に戻り、取敢えずウンコの方を選んだ叶だったが、兄の家ではちさとに、どっちもしょぼいと駄目出しされていた。
魂(エゴ)があっても、エモーションが無ければ心に響かない。
感想
今回は母との対話にむけての心構えを端々に挟みながら、お話は進みます。
獣将王も大詰め、最終回を残すのみとなり、次巻はいよいよ旅行編がスタートします。
今回は大好きな白狐丸のお話が、多く入っていたので大満足でした。
ああいう、あくどくて、それを悪びれることも無いけれど、どこか憎めないキャラクターは大好物です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。