ヨシノズイカラ 2 ガンガンコミックス
著:ヨシノサツキ
出版社:スクエアエニックス
離島で暮らす売れない漫画家、遠野成彦32歳。
彼は今まで描いていたファンタジーではなく、離島を舞台にした日常系漫画のネームを描き上げます。
連載の決まったその漫画「わっかもん」は中々好評なようで、ファンも徐々に増えてきました。
あらすじ
ひー兄ちゃん。
成彦の漫画「わっかもん」に登場するキャラクターの一人。
彼は優しく面倒見のいい、何をさせても完璧にこなす、主人公の四人にとっては頼りになる兄貴的な存在だ。
そんなひー兄ちゃんの存在が、現在成彦を悩ませていた。
Hの女と名乗る女性から毎週届く手紙には、ひー兄ちゃんへの想いと共に彼を作品の主役にするよう、成彦への要望が綴られていたのだ。
手紙は郵便局を介さず、直接投函されているようだ。
差し出し人は島民らしいが、その熱量に成彦は少し怖くなる。
とし坊はそんな成彦の様子を見て、少し調べてみると口にした。
数日後、とし坊の掛け声と奇声が表から聞こえた。
成彦が出てみると、そこには投網に絡めとられた小学生の女の子がいた。
彼女は成彦の同級生、笹山の子供一人ひいろだった。
Hの女の正体は、この子だったようだ。
成彦はとし坊にファンの扱いはもっと丁重にと、注意を口にするが、当の本人、ひいろにお前のファンじゃないと全力で否定される。
彼女は成彦の作品のファンでは無く、ひー兄ちゃん個人のファンだった。
成彦への手紙も、彼の過去作へのディスりも含めつつ、ひー兄ちゃんを主役にする事に言及していた。
その事で心に傷を負いながら、成彦は彼女の話を聞いてみると、ひいろはひー兄ちゃんに恋をしているようだった。
成彦ととし坊にそれを指摘され、ひいろの顔は真っ赤にそまる。
投網を跳ね除け、帰ろうとするひいろに成彦は「もういいの?」と声を掛けた。
ひいろはその言葉で振り返ると、顔を染め小刻みに震えながら「サインならもらっといてやる」と上から目線で答えた。
そんな彼女を揶揄いつつも、成彦は彼女のリクエスト(当然ひー兄ちゃん。彼以外は描くな!)でひー兄ちゃんを色紙に描き上げる。
下書きとペン入れ、それを嬉しそうに見ながら、ひいろの脳内はひー兄ちゃんとのロマンスの妄想に心躍らせていた。
吹き出しを書き入れ、ひいろちゃんへとサインペンで書き込む。
正に恋する乙女といった感じで頬をそめるひいろ。
その様子を見た成彦は、自分もそうだったなと微笑む。
彼も過去(現在もだが)には好きな漫画のキャラをひいろの様に好きになったものだ。
成彦は出来上がった色紙に、最後の仕上げと自身のサインを書きこんだ。
それを手渡されたひいろの表情が曇る。
「オメェ…ゴミみてぇなもん書いてんじゃねぇよ」
その後、少し不満を残しつつも、ホクホク顔でひいろは帰った。
小学生、怖いと口にし、とし坊にサインについてゴミかなと成彦は尋ねる。
とし坊はニッコリと微笑みながら、ゴミというか、ゴミみたいですねと返した。
感想
今回は、H(ひー兄ちゃん)の女、ひいろのお話から、東京でのサイン会へと物語は展開していきます。
成彦は十年間、漫画家をして来ましたがサイン会は初めてで、嬉しい反面、どうファンと接していいか、ひいろにゴミと言われたサインをどうするのか、行った事の無い東京への恐れ、電話やメールでしか接した事の無い担当さんの事など、ワタワタと慌てます。
昔は原稿は紙であった為、東京に住む漫画家さんが多かったイメージですが、最近はデジタル化が進み、ネットで大きなファイルも送れる様になったので、地方在住の方も増えた様に感じます。
作業環境も全てデジタルで完結する作家さんも、多いのでは無いでしょうか。
唯、やはり直接ファンと出会い、感想を貰えるというのは作家にとってはとても嬉しい様でした。
紙面の向こうにいる、読んでくれている誰かの存在を直に感じるという事は、不安を払拭してくれるとても大きな力なのでしょう。
今回登場したひいろですが、感じとしては、ばらかもんに登場した子供達を混ぜた様な感じのキャラクターです。
彼女はあくまでひー兄ちゃんのファンであって、成彦のファンでは無いのですが、ひー兄ちゃんを生み出した成彦にも少しずつですが、馴染んできているようです。
まとめ
東京でのサイン会は成彦に一人じゃないという事を、改めて実感させた様でした。
次のお話がどうなるのか、読むのが楽しみです。
ちなみに二巻のカバーイラストはひー兄ちゃんでは無く、とし坊です。
この作品はガンガンONLINEで一部無料で読む事が可能です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。