混沌魔術師の挑戦
ソード・ワールドリプレイ集(7)
著:清松みゆき/グループSNE
画:中村博文・竜胆丈二
出版社: 富士見書房 富士見ドラゴンブック
バブリーズアドベンチャラーズによるリプレイ集。
赤貧に喘ぐ冒険者たち、前巻の最後の依頼でようやく少し潤うことになりました。
アーチ―に至っては、魔剣を手に入れることに成功します。
さて、この巻では彼らの名前の由来にもなった、ある出来事が起きます。 それによりプレイスタイルが激変します。
「お金の力って怖いわぁ」という感じのシリーズ第二集です。
あらすじや感想など
第五話 結婚するって本当ですか?
シナリオ あらすじ
ロールプレイとしてフィリスはアーチ―との結婚を狙っています。
GM(ゲーム・マスター)はそこで今回アーチ―の見合い話を思いつきました。
アーチ―の家は資産家で、現在は遺産で生活しています。
遺産は結構な額で、無茶をしなければあと三代は食うに困らないようです。
アーチ―の父親からの見合い話から、ゲームはスタートします。
玉の輿を狙うフィリスは、アーチ―の動向が気になって仕方ありません。
使い魔の猫を使い、彼の動きを探ります。
アーチ―と見合い女性アリーアの仲は順調に進み、彼女を自宅に招き料理をご馳走になります。
その後、アリーアが見たいと言った書庫に案内するのですが、彼女が興味を示した本は「変幻する精霊」という上位古代語で書かれた物でした。
前回の依頼の黒幕が、手下のダークエルフに持たせたアイテムが、精霊の存在をゆがめるものだったこともあり、プレイヤーたちは彼女に不信感を抱きます。
そこに依頼が舞い込みます。 依頼主の素性の怪しさや依頼のタイミングの良さから、彼らは伝手を頼って調査を開始しました。
感想
GMの清松さんも書いていますが、ロールプレイで恋愛を扱うのはなかなか難しいでしょう。
プレイヤーが男女ならまだしも、同性同士だったりするとやりにくいでしょうし、実際に恋人同士ならまわりがしらけます。
今回のセッションはプレイヤーが慣れていることと、フィリスがあくまでアーチ―の家狙いということで、読んでいて楽しいものになっています。
第六話 混沌魔術師の挑戦
シナリオ あらすじ
このセッションでは冒頭に、アーチ―が見合いした相手の家から謝罪という形で、報酬が提示されます。
前回は依頼をこなしたわけではないので、実質収入は0でした。
GMは今回で事件の黒幕である、混沌魔術師の話を終わらせたいこともあり、かなり報酬に色を付けています。
報酬は現金か魔法の品のどちらかです。
現金なら十万ガメル、魔法の品なら魔晶石五個とスケープドール二体。(魔晶石は魔法を使う際の精神力を補います。ようは使い捨ての外付けバッテリーみたいなものです。スケープドールは髪の毛を結ぶとその人物がうけたダメージを肩代わりしてくれます。)
プレイヤーたちは悩みますが、会話の中でソード・ワールドにおけるマジックアイテムの高価さに気付きます。
GMも気づいていなかったのですが、スケープドールは一体百万ガメルで取引されていたのです。
売却する場合は半額になるのですが、それでも五十万ガメルです。
プレイヤーは当然魔法の品を選び、一体を売却して労せず五十万ガメルもの大金を入手します。
その後それぞれに八万ガメルずつ分配し、魔晶石や高品質の武具を購入します。
グイズノーは蘇生代の差額を神殿に寄付しました。
一気に戦力の上がったプレイヤーたち、GMは戦々恐々としながらセッションを続けます。
その後、冒険者の店でくつろぐ彼らの元に、故買屋のパイロンから呼び出しがかかります。
パイロンの家に着くと、彼からお前らの所為だと詰め寄られます。
パイロンは一通の手紙を、アーチ―達に突きつけます。
手紙は混沌魔術師のヴォーゲルからで、アーチーの家にある「変幻する精霊」という禁書をパダにある遺跡に持ってくること、それと交換に娘を返すと書かれていました。
本を渡したくないプレイヤーたちは、街で情報を集め、スケープドールにパイロンの娘の髪の毛を使い、保険を掛けます。
さらに冒険者のパーティを二つ雇い、魔晶石を買い込んで準備万端でヴォーゲルの待つ遺跡に向かうのでした。
感想
GMもかなり焦ったのではないでしょうか。
バランス取りのために用意したスケープドールが、高額だったためパーティが予想外に強化されてしまいました。
さらに、魔晶石の存在が魔法の力を一気に引き上げました。
ソード・ワールドでは魔法の効果を、魔力を余分に消費することで高めることができます。
例えば眠りの魔法でも、効果を高めれば高い確率で、相手を眠らせることが出来ます。
それは沈黙の呪文でも同様です。
このセッションからパーティー名の由来である、バブリーな冒険が始まりました。
第七話 虎と少女とサーカス団
シナリオ あらすじ
前回、予想外に大金を得ることになったプレイヤーたち。
レベルも上がり着々と強さを増しています。
セッションはオランにサーカス団がやって来たところから始まります。 アーチ―を除いた他のメンバーはサーカスを訪れます。
そこで一行は、昔レジィナが所属していた、一座の座長家族と再会します。
レジィナは再開を喜び、近況を報告し合います。
彼らは一座を解散し、サーカス団で働いていました。
そこには昔、一座が拾った虎のトップもいました。
サーカス団の団長は猛獣使いで、トップに火の輪くぐりをさせたい様でした。
翌日、アーチ―も含めた一行はサーカスを見にテントを訪れます。 演目は進み、いよいよトップの出番です。
しかし、気の弱いトップは本番で火の輪をくぐれず、座長の娘リズの元に戻ってしまいます。
本番が終わって楽屋を訪れると、部屋の中からは団長の叱責の声が聞こえてきました。
部屋から出てきた団長に話を聞くと、あんなに気が弱くては火の輪くぐりは無理そうだが、他に何をやらせるべきかと団長も悩んでいるようでした。
その翌日、サーカスで殺人事件が起こったとの知らせが入りました。 レジィナたちは急いで駆け付けます。
殺されたのは団長で、どうもトップに殺されたと考えられています。
捜査に当たっている巡察官はギリアムという男でした。
彼はトップが団長を殺したと決めてかかっているようです。
レジィナたちはトップを救うため、独自に調査を開始しました。
感想
このお話にでてくる巡察官のギリアムは、ドワーフの探偵デュダシリーズに出て来る人物です。
彼はあまり有能とは言えません。
TRPGにおいては、プレイヤー全員が知っている人物を使う事で、説明を減らし時間を節約することが出来るでしょう。
今回のセッションの見どころは、泣きじゃくるリズに向けての、スイフリーの一言「泣き止むんだ」でしょうか。
まとめ
この巻で大金を手に入れたことで、魔晶石を使った戦闘が可能になり、戦闘が一瞬で終わったりします。
ですが探索のシーンでは変わらず、スイフリーとアーチ―を中心に深読みしすぎて推理が別の方向に行ってしまう事も多いです。
それも含めてプレイ中の空気を感じることが出来、大変楽しく読むことが出来ました。